13.秘密の一人エッチ



 いきなり部屋のドアが開き、真雪が中にいた健太郎に声を掛けた。

「ケン兄、お風呂いいよ……」

「うわっ! マ、マユっ!」

「……何してるの?」

「ドア閉めろっ! わかったから、は、早く出て行ってくれっ!」

 

 中学一年生の健太郎が、親友修平に教えられて毎夜のようにやっていた一人エッチを、妹に見られた瞬間でした。

 

 最初は射精とセックスとを今ひとつ結びつけることができなかった健太郎も、その後修平から見せられた雑誌や聞かされた話、インターネットでこっそり見るようになったエッチなサイトで次第に射精の快感が女性とのセックスにつながり、同時に自分がやっていることがそういう秘密の行為として認識されるようになっていきました。

 

 風呂上がりの健太郎をつかまえて、真雪はにこにこしながら言います。

「ねえねえ、ケン兄」

「な、なんだよ」

「さっきやってたのって、『オナニー』って言うんでしょ?」

 健太郎は思いきり赤面した。

「お、おまえ知ってるのか?」

「うん。夏輝から教えてもらった」

「日向から?」

「うん。いろいろね。やっぱり気持ちいいんでしょ?」

「あ、あんまりあれこれ聞かないでくれっ!」

 

健太郎のプロフィール / 真雪のプロフィール

 男のコであれば、いつか必ず通る道。どうやってその方法を身につけたかは十人十色ですが、みんなほぼ間違いなく、ひとしきり射精の快感の虜になってしまうはずです。

 

 健太郎、真雪兄妹の従兄弟である龍も、やはり中一の時にこの快感に襲われました。ハワイへの家族旅行の時、そのいとこの真雪とセックスする夢を見て射精してしまったのです。いわゆる『夢精』です。そして彼にとってはこれが『精通』。

 龍の場合は、射精がセックスの結果起こることだということを知っていたわけで、健太郎と違って、その後はこうして真雪に似た巨乳のモデルほしのあみの写真を見ながら一人エッチに耽っていたのです。

 龍は自分の部屋で毎晩のようにその行為を楽しんでいましたが、きっちり母親のミカには(当然父親ケンジにも)ばれていました。何しろ大量に出すので、ティッシュを数枚重ねたところでしみ出してシーツにぼたぼた落ちていたのです。そんな染みやゴミ箱の中に入っている大量の処理後のティッシュ、それにベッドの下に隠されていた巨乳グラドルほしのあみの写真集が、龍の熱い行為を如実に物語っていたのです。

 

 

龍のプロフィール

 修平は3歳年上の兄良平に教えられました。

 

 修平が小六の時、中三の良平はすでに射精の快感を十分知っていましたが、それを弟にもわからせたのです。ですから修平は中学に上がる前から一人でやる行為を知っていました。

 修平が高二の時、大学生だった良平がオナニーグッズを買ってきたことがあって、それを使ってやってみた修平は、ますます生身の女性とのセックスに憧れるようになっていきます。

 

 でも、彼が実際に女のコとそんなことになるのは高校三年生の時。

 

 一人でやるのとは随分勝手が違うのが、二人で気持ち良くなるセックス。男は射精によってほぼ間違いなく最高に気持ち良くなれるけれど、女のコはそう簡単にはいかない。そういうことも兄からいつも聞かされていた修平でした。

 

「いいか、修平。セックスってのは、女のコをいかにして気持ち良くさせるかってことが最大の課題なんだぞ」

「そうなのか? セックスって突っ込んでやればオンナも気持ち良くなるんじゃねえの?」

 ちっちっち……。良平は目を閉じて右手の人差し指を左右に小さく揺らした。

「甘いな、修平」

「って、兄貴もそうなのかよ。彼女とやってんだろ? 何度も」

「難しいんだ。俺だけ先に気持ち良くなってイっちまうことがほとんどなんだ」

「彼女、イけねえのか?」

「たぶん……」

「何だよ、たぶんって……」

「だって、女のコがイったかどうか、なんて見た目じゃわからないからな」

「彼女は何つってるんだ?」

「『気持ち良かったよ』とは言ってくれるけどな。ほんとかどうかわからない」

「へえ……。そんなもんなんだな」

 

 ちなみに、この修平の兄良平は、その後29歳の時、縁あって修平や夏輝の高校時代の友人春日野リサと出会い、結婚の約束をします(→Chocolate Time 外伝『雨の物語集』第1話『雨の歌』)。

 

修平のプロフィール / 夏輝のプロフィール

 

2014,2,3