真雪が水族館の研修主任板東 俊介(→板東のプロフィール)と不倫してしまい、帰ってきて恋人龍に泣きながら抱かれたエピソード10。まだ若かった二人の心には大きな傷が残りました。激しく後悔する真雪と、動揺しながらもそれを精一杯の力で赦そうとする龍、恋人同士であるが故の切なさが、原作者の僕の胸をも打ちました。
結果的にそれによってより二人の繋がりは深くなったわけで、めでたしめでたし、ということになるのですが、クリスマス・イブの晩、真雪の家で二人きりの時間を過ごすことになる彼らは、当然こんな風に激しく求め合ったのでした。
板東に抱かれた夜は、真雪の安全日の期間でした。板東というオトコは、避妊具なんか使わず、自分がひっかけた女性の「中」にためらいもなく射精するような鬼畜なヤツ。もしそれで相手の女性が妊娠したとしても、中絶の手術を受けさせれば済むこと、と簡単に考えている、とんでもないオトコです。そういう板東に二夜続けて中出しをされてしまった真雪は、幸い妊娠することはありませんでしたが、この男の体液を自分の中に入れられたことにひどく落ち込み、もう二度と龍以外の精液を取り込むことなどしない、と誓いを立てます。
それだけに、こうして最愛の恋人龍のものを受け入れ、身体の奥深くに彼の体液を取り込むことが、真雪にとっては最高の浄化につながったわけです。もちろん龍は龍で、真雪が一時的にしろ他人の身体を受け入れた事実を早く忘れたくて、こうして何度も真雪の身体を抱き、求めていったのです。
気の迷いで板東に抱かれる真雪は、この男に「身体の癒し」を求めていたと思われます。気持ちは大きく板東に傾いていたわけではなく、龍と会えない寂しさを癒すために、見た目優しそうで、紳士的で、それなりにイケメンだった板東に抱かれることを拒まなかった。もしかしたら、彼に食事に誘われ、チェリーのカクテルを飲まされていなければ、そんなことにはならなくて済んだのかもしれませんが、あの時飲んでしまったアルコールの影響もあって、板東の思惑通りに、ホテルに連れ込まれて、思いを遂げられてしまいました。そしてその時、全てが終わった後、真雪は期待していた癒しも、安らぎも感じることができず、結局明くる晩も淡い期待と共にこの男に抱かれてしまったのでした。そして三日目、板東の鬼畜な性癖に気づいた真雪は、「もう絶対に会うことはない!」と絶縁宣言をして板東を突き放します。
彼女が最初に板東に抱かれる時から、挿絵としての真雪の表情は、どれも陰りを帯びさせています。けっして癒されたり、思い切り感じたりしていない、そういう龍との愛し合いの時とは全く違う雰囲気の真雪の画を描くことを心がけました。
イく瞬間、苦しそうな表情の龍と真雪を描く時、僕は原作者ながらとても満ち足りた気持ちになります。それは誰よりも辛い思いをさせてしまった二人への申し訳なさがそうさせるのかもしれません。
2013,4,3 Simpson
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