第4話 レイプの代償 page 1 / page 2

《greenroom talk~楽屋話》

 

「というわけで、鷹匠への復讐は完了したってわけだね?」オフィスのソファで、神父尊はコーヒーを片手に三人に向かって言った。

「はい」

「でもさ、これって復讐になってないんじゃない?」

「え? そうですか?」

「龍くん改め鷹匠はさ、修平くんに液を掛けられるの、そんなにイヤじゃないんじゃない? 実は」

「そうですねえ」茶髪の龍が言った。「俺自身は全然平気ですね。修平さんのだから。でも鷹匠は心底イヤなんじゃないですかね。男に興味はなさそうだし」

「って、」修平が言った。「龍、おまえは興味あるのかよ、男に」

「あるとしたら、修平さんでしょ、それにケン兄かな」

「な、なんでだ?」

「かっこいいし、ガタイもいいし。それに修平さんをそういう目で見られるから、俺、貴男と真雪とのエッチシーンに興奮できるんだよ」

「そ、そうなのか?」

「真雪にはもちろんだけど、修平さんにも性的に興奮できるからね」

「さらっと言いやがって……」修平は赤くなってコーヒーをすすった。

「それにさ、俺が鷹匠のキャラを考える時、迷わず修平さんの容姿を参考にしたんだよ」

「え? 俺の?」 修平は自分の鼻を人差し指でつついた。

「短髪にヒゲ」龍は笑いながら、顎の髭をさすった。

「なんでまた……」

「一度髪を短くしてみたかったんだけど、手近なモデルが修平さんだったからね。それにワイルドでわがままな感じもするし」

 修平はむっとしたように龍を睨んだ。「誰がわがままだってんだ」

 龍の横から真雪が言った。「突っ走りやすい、っていう意味だよ。あたしが言ったんだよ」

「まったく……」修平はコーヒーをすすった。

「でも修平さんそっくりじゃ読者も戸惑うだろうから、髪を染めたんだ」

 カップから口を離して、修平は口角を上げた。「その髪、たしかにチャラい感じがして鷹匠亮介の自己チューな性格に合ってる気がすんな」

「あのシナリオ、今回は龍くんの手によるモノなんでしょう?」神父尊が言った。

「はい。そうです」

「真雪ちゃんは抵抗なかった?」

「え? 何がですか?」

「だって、龍くんの目の前で修平くんとセックスするんだよ。平気なの?」

「平気ですよ。だって、こないだも夫婦交換させてもらったじゃないですか」

「そりゃそうだけど……」

「龍が見てるから、余計に興奮したりもしましたし」

「へえ」

「真雪も俺も、きっとそれぞれが目の前で別人とエッチしてるの見て興奮する傾向があるんじゃないかな。もちろん相手限定ですけどね」

「真雪も、龍が他のオンナとセックスしているのを見て、興奮したりするってのか?」修平が訊いた。

「こないだの夫婦交換でさ、あたし龍が夏輝と愛し合ってるの見て、身体がどんどん熱くなってたもん」

「嫉妬心ってわけじゃなくてか?」

「うん。あ、でももちろん夏輝だからだと思うよ。龍があたしの知らないオンナと浮気してる現場を見たら、きっと逆上して刃傷沙汰になる」

「怖えな」修平はまたカップを口に運んだ。

 すぐにカップを口から離して修平は顔を上げた。「そうだ、そう言えば」

「なに? どうしたの? しゅうちゃん」

「俺、めっちゃ恐かったせ、龍」

 龍は意外そうな顔で修平を見た。「え? 恐かった?」

「真雪がよ、いつでもおっぱい触りに来てもいい、って言った時、おまえ睨んだだろ」

 龍は苦笑した。「ごめんなさい。つい……」

「龍があんな顔したの、俺初めて見た」

「そんな顔してた?」龍はばつが悪そうに頭を掻いた。

「真雪も迂闊なこと言うんじゃねえよ。龍はおまえのおっぱいに相当思い入れがあるんだろ? 他のオトコに触らせたかないに決まってっだろ?」

「あの一言の方が鷹匠への復讐になってたのかもね」真雪は笑いながらカップを口に運んだ。

「鷹匠の正体は龍くんだからね」神父尊が言った。

 

「でも、それを言うなら、」龍が言った。「修平さん、二度目は本気で殴ったでしょ、俺を」

「え?」修平は目をしばたたかせた。

「最初に殴られた時は、ちゃんと手を抜いてくれてたから痛くなかったけど、『夏輝さんとセックスしたかった』って鷹匠が言った時のパンチは相当効いたよ」

 修平が頭を掻きながら言った。「す、すまねえ、龍。つい本気になっちまって……」

「しゅうちゃんは夏輝を愛してるからね」真雪が修平を斜に見てにやにやしながら言った。

「龍本人だったら別に何ともなかったんだけどよ、鷹匠に言われっと、なんかめちゃめちゃムカついちまって……」

 修平はまたぽりぽりと後頭部を掻いた。

「ドラマに没頭してたってことだね」真雪が言った。

 

「ところで、」龍が口を開いた。「今回のこの話も、読者のリクエストだったんでしょ?」

「そう」神父尊がカップをテーブルに戻して言った。「もう随分昔の話なんだけど、『Chocolate Time』シリーズで、ケンジくんがアヤカさんにレイプされてしまうってのがあったでしょ?」

「ああ、エピソード2『Bitter Chocolate Time』ですね」

「そう。あの中でアヤカが、拘束されたケンジ君に跨がって絶頂を迎えるという挿絵が、別サイトでえらく人気でね」

「へえ」

「けっこう希少なシチュエーションで、でもあんなのに萌えるっていう読者は意外に多い」

「そうなんだ」

「だからこの話、龍くんに振ったんだ」

「なんで俺に?」

「だって、逆レイプされるのは鷹匠、つまり君でしょ? とりあえず痛めつけられる悪役がシナリオを書いた方がいいじゃない」

「なのによ、」修平が割って入った「なんでお前、真雪に直にイかされずに、俺と真雪を絡ませたんだよ」

「その方がおもしろいじゃん。読者の意表もつけるし」

「俺も意表をつかれたよっ!」修平がまた赤くなった。

「でもさ、真雪ちゃんは修平くんにかなり激しくイかされてたね」

「と、思うでしょ?」修平がにやりとして言った。

「え?」

「実はあの後、真雪のヤツ、拘束された龍、じゃなかった鷹匠と繋がって、あの日で一番激しくイきやがったんすよ。龍といっしょに」

「え? 龍くんを犬の手術台に縛り付けたまま?」

「得意の騎乗位で」

「そうなんだー」神父尊はにこにこ笑いながら言った。「最後のシメはやっぱり正当なパートナーじゃなきゃ、っていうことだね」

「そうっすね」

「じゃあ修平くんは、帰って夏輝ちゃんと……」

「俺もあの後、すぐ夏輝に電話して、ショップでヤっちまいました」修平はひどく照れて頭を掻きむしった。

「ショップに呼んだんだ」

「真雪たちの見てたら、が、我慢できなくて……。手術台で俺も夏輝をわんわんスタイルで」

「さすがだね」神父尊は満足そうにコーヒーを飲み干した。

 

――終わり

 

2015,7,24

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★鷹匠 亮介の正体は真雪の最愛の夫、龍でした(笑)


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