第8話 父の温もり page 1 / page 2 / page 3 / page 4


《greenroom talk~楽屋話》

 

 

「どうでしたか? ケンジさん」修平が不必要にはしゃぎながら言った。

 ソファに座ってコーヒーを飲んでいたケンジは、真っ赤になって言葉を発することができないでいた。

 ケンジの隣に座ったミカが、ニコニコしながらコーヒーカップを傾けた。

「夏輝はうちのケンジとこういうことしたかったんだ」

 

「しゅ、修平君は平気だったのか?」ケンジがようやく口を開いた。「君は夏輝ちゃんにいわば浮気されたんだぞ?」

「いや、このシナリオ、俺が書いたんです」

「ええっ?! 神父尊さんじゃなかったのか?」

「夏輝はケンジさんに抱かれるのが夢だったんすから。言ってませんでしたっけか?」

「あれを本気にするわけないだろ」ケンジはまた頬を赤らめた。

 

 ミカが言った。

「だけどさ、修平はかなり嫉妬深いんだろ? 夏輝」

「はい。あたしが誰かと話してたりすると『誰だったんだ? あいつ』。男の人と電話してて

も『誰だったんだ? 今の』。もう大変」

「なのに、なんでこんなことさせるかな」ケンジが眉間に皺を寄せて修平を睨み付けた。「僕は君に殺されたくはないぞ」

「じ、実は……」修平がもじもじしながら言った。「俺、昔から夏輝がケンジさんとセックスしてるの想像して、むちゃくちゃ興奮してたんです」

「はあ?」ケンジは大声を出した。「それって、僕に寝取られてるってことじゃないか。それに興奮するっていうのか?」

「はい。もちろんケンジさん限定なんすけど」

「他のオトコじゃだめなんだね?」ミカが言った。

「他のヤツが夏輝とヤったりしたら、俺、速攻でそいつの息の根を止めます」

「こ、怖いな……」ケンジがカップを口に運んだ。

 

「とか何とか言ってますけど、こないだからあたし龍くんともやったし、ケンちゃんにも抱かれたし、許容範囲は少し広がりましたね」

「読者からのリクエストもあったしな。しかも、俺も真雪や春菜を抱かせてもらったし……」修平はぽりぽりと頭を掻いて赤面した。「だけど、龍とやってる夏輝もケンタに抱かれてる夏輝も、どっちもすっごく、なんて言うか、こう色っぽくて、見てて純粋に興奮できたっすね」

「そんなものなんだ……」ケンジが少し意外そうな顔をした。

「だって、龍もケンタもケンジさんにそっくりじゃないっすか。見た目もだけど、雰囲気も、何となく」

「なるほどね」ミカが笑った。「わかるわかる」

「それに、君たちは夫婦もろとも超仲良しだからね。」神父尊がコーヒー片手に微笑んだ。

 

★夏輝、修平夫婦と真雪、龍夫婦のスワッピング話→劇場版 Chocolate Time 第1話『わくわくパートナー交換』

★夏輝、修平と春菜、健太郎の夫婦交換話→劇場版 Chocolate Time 第7話『赤い薔薇の秘密』

 

「でも、ケンジさんとは、以前から夏輝と是非ヤって欲しかったんです」

「おいおい! 露骨だぞ。何だよ『ヤってほしかった』って」ケンジは噴き出しそうになったコーヒーを慌てて飲み込んだ。

「夏輝とケンジが繋がってるとこモニターで見ながら、こいつ」ミカが修平を横目で見ながら言った。「我慢できずに二回ぐらいヌいたみたいだよ」

「さ、三回っす……」修平が縮こまって言った。

「ほんとに?」夏輝が言った。

 修平は赤い顔を上げた。「だ、だってすんげー興奮しちまったんだ……」

「まったく……」ケンジは呆れたような、申し訳ないような複雑な顔をしてカップを口に運んだ。

 

「思えば、」修平が遠い目をして言った。「俺と夏輝があなたがたに性の手ほどきをプールで受けた時、」

「手ほどいてないだろ! ミカとのシーンを見せただけだったじゃないか」

 修平は遠い目をしたまま言った。「はい。そうです。その時、俺、ケンジさんの姿に惚れちまって……っていうか、ケンジさんのハダカやセックスのスタイルに感激しちまって、同時にケンジさんに夏輝が抱かれてるところも想像しちゃって……。でも俺、ミカさんも同じように抱きたくなっちゃって、俺とケンジさんをダブらせて見てたら、その、あの、ええい! もう何言ってるかわかんねーっ!」

 修平は頭を掻きむしった。

「つまり、」ミカがおかしそうに言った。「修平はあたしも抱きたいと思っているけど、ケンジに夏輝が抱かれるのにも萌えるっていうわけなんだね?」

「端的に言えばそうです。相手限定寝取られ願望ってやつです」修平はほんのりと頬を赤く染めて続けた。「お、俺自身、ケンジさんに抱かれたいぐらいっす」

 

 ぶーっ! ケンジは盛大にコーヒーを噴いた。

 

★修平と夏輝がセックスのやり方についてケンジ夫婦に学ぶ話→『Marron Chocolate Time~初心者指導』

 

「で? 夏輝はどうだったの?」ミカが訊いた。

「あたしも、以前からケンジさんにとっても憧れてて、お父ちゃんみたいだって感じてて、ずっと抱かれたいって思ってましたから、実際にケンジさんとこういうことになって、とっても満ち足りてます」

「いや、お父ちゃんみたいな人とセックスしたいなんて普通思わないだろ」ミカが言った。

「セックスするかどうかは別として、きっとお父ちゃんが生きていたら、あたし同じ気持ちになってたと思います。ケンジさんに抱かれて、温かさも大きさも安心感も、何度も夢でみたお父ちゃんと同じだ、ってずっと感じてましたもん」

「そうなんだね」ミカは感心したように言って、隣のケンジの顔を見た。

 

「で、ケンジさん、どうだったっすか? 夏輝の味は」修平がにこにこしながら言った。

「な、何だよ、『味』って」

「台本通り三回夏輝と一緒に天国に行ってたじゃない、ケンジ」ミカもにこにこしながら訊いた。

 赤面して口をつぐんだケンジの代わりに夏輝が言った。「もう、とっても素敵な夜でした。真雪が言ってた通り。客観的に言っても、さわり方も、動き方も、話し方も声も表情も、全部、隙がない紳士って感じ。たぶん普通の男には絶対にできない芸当」

 ミカが言った。「真雪が言ってた?」

「そう。ケンジさんとミカさん、龍くん夫婦とスワッピングしたんでしょ?」

 ケンジは慌てて顔を上げた。「ま、真雪に聞いたの? あ、あの夜のこと」

 「はい」夏輝は満面の笑みで応えた。「真雪、嬉々として熱く語ってました」

「そん時も続けて三回一緒に上り詰めたらしいじゃないっすか」修平も笑いながら言った。

「そ、そんなことまで聞いたのかっ」ケンジは早口で言った。

「だから今回の台本にも遠慮なく三回設定したんすよ。クライマックス」

 

★ケンジ、ミカ夫婦と龍、真雪夫婦のスワッピング話→外伝第2集第12話『夫婦交換タイム』

 

「だけどね、」夏輝が頬を少し赤くして言った。「ケンジさんは台本通りあたしといっしょに三回イってくださった後、すぐにまた盛り上がって、いろんなポジションで抱いてくださったんだよ」

「え? あの後もまだやってたのか? 二人で」ミカが少し呆れたように言った。

「さ、さすがに夜通し何度もクライマックスを迎えるのは、この歳になるとつらいんだけどね……、あはは……」ケンジはばつが悪そうに頭を掻いた。

「それでもあの後、もう三回、一緒に登り詰めましたよね、ケンジさん」

「そ、そうだったね」ケンジは蚊の鳴くような小さな声で言った。

「さらに三回もか?」ミカが大声を出した。ケンジはびくん、と身体を震わせた。

「ってことは一晩に六回! 絶倫じゃん、ケンジ」

「シナリオには最初の三回しか設定してなかったのにな……」修平がにやにやしながら言った。

「ご、ごめん……調子に乗っちゃって……」ケンジはひどく申し訳なさそうに頭を掻いた。

「いいんすよ。夏輝も大満足したみたいだし」修平は笑いながらコーヒーをすすった。

 

 

――ケンジと夏輝のその夜の続き

 

「僕の膝にお乗り、夏輝」ケンジは脚を伸ばして座り、まだ荒い息を繰り返している夏輝を誘った。

 夏輝はこくんと頷き、ケンジと向かい合うカタチで彼の膝に跨がった。

 ケンジのものはまだ硬く、大きさを失っていなかった。

「ケンジ、すごい……」夏輝は小さく呟いた。

 ケンジはふっと笑って、夏輝の頬を温かな両手で包み込み、額をくっつけ合った。

「君の身体があまりにも魅力的過ぎるんだ」

 それからケンジは夏輝の腰に手を当てて、彼女の羽のように柔らかく軽やかな身体をふわりと持ち上げ、天を指した自分のペニスの上に導いた。

 夏輝は仰け反りながらケンジを再び中に受け入れた。

 

 んんっ、と呻いて、ケンジは夏輝の身体に手を回し、自分の胸に密着させると、その白くしなやかな身体を上下に揺すり始めた。

「ケンジ、ああ……」

「夏輝、気持ちいい、すごく……」

 そう言いながら、ケンジは夏輝の首筋に舌を這わせた。

 夏輝は激しく喘ぎ始めた。

「ケンジ、ケンジっ! ま、またイっちゃう! あたし、あたしっ!」

「僕も、も、もう……んんんっ……」

 ケンジは歯を食いしばり、夏輝の身体をきつく抱きしめた。そして夏輝の口を自分のそれで塞ぎ、激しく吸い始めた。いつしか夏輝は自らの身体をバネのように弾ませ、熱いケンジの分身の感触を身体の奥深くで味わっていた。

 

「な、夏輝……」

「イくの? ケンジ。いいよ、いつでも来て、あああ……」夏輝は顎を上げて懇願するようにケンジの首に腕を回した。

 

 ケンジの動きが速く激しくなり、夏輝の全身に鳥肌が広がった。

 そしてぐうっ! という音がケンジの喉元から聞こえ、彼の中から弾けだした熱い液が夏輝の体内に射出され始めた。

 

「んんんーっ!」夏輝はケンジとキスをしたまま、大きく呻きながら全身を震わせた。

 

 動きを止めた夏輝は、自分の中で放出を終えたケンジのペニスがまたむくむくと大きさを増しているのに気づいた。

「ケンジ?」

「な、夏輝……」ケンジは顔と耳を真っ赤にして荒い息を繰り返している。

 夏輝はケンジの目を見つめ返した。「……来て、何度でも。あたしももう……」そして夏輝はケンジの身体を押しやり、仰向けにすると、彼のペニスを受け入れたまま身体回転させ、後ろ向きになった。

 ケンジは上半身を起こして夏輝の腰をがっちりと押さえ込むと、そのまま膝立ちになった。夏輝はそれに合わせて四つん這いになった。

 「夏輝、今度は違う場所を愛してあげるよ」

 ケンジはそう言うと、夏輝の背中から腕を回し、うつぶせにした。そしてそのままケンジは彼女の身体にのしかかり、繋がったままのペニスを真上から夏輝の谷間に深く押し込んだ。

 きゃあっ! という悲鳴を上げた夏輝は全身を痙攣させ始めた。「ケンジ! ケンジっ!」

 ケンジはシーツに両手を突き、えぐるような動きで夏輝の敏感になった谷間に熱いものを抜き差しした。

「だめっ! だめっ! 壊れちゃう! ケンジ、ケンジ!」

 身体を押さえ込まれた夏輝は激しくもがきながら目から涙を溢れさせていた。

 

 やがてケンジは夏輝の背中に自分の身体を密着させ、汗ばんだ二つの白い膨らみを両手でぎゅっと包み込んだ。そしてさらに腰の動きを大きくさせた。

「んっ、んっ、んっ! 夏輝、遠慮しないで」

「ケンジ! も、もう……」夏輝は息も絶え絶えに目をむいて激しく喘いだ。「だめ、だめっ! 飛んで行っちゃいそう!」

 

「イ、イくよ、僕も」

 夏輝は身体を大きく震わせながら声にならない呻き声を上げ続けている。

「イくっ、出るっ!」

 

 そして夏輝の身体の最深部にケンジのペニスが到達し、次の瞬間、中で破裂したように膨張したかと夏輝が思った途端、再びケンジの体内から噴き上がったものが激しくそこに放出され始めた。

「ああああーっ!」夏輝は汗だくになって身体を震わせながら叫んだ。

 

 ビクン、ビクンと何度も身体を脈動させるケンジの心地よい重さを夏輝は味わいながら、夏輝は目をぎゅっと閉じて喘ぎ続けた。

 

「ケンジ、ケンジ!」

 夏輝は焦ったように叫びながら、顔を振り向かせてケンジを見た。

「も、もっと下さい! あたしに貴男の熱い想いをもっと!」

 

 ケンジは身体を起こし、深く繋がったまま脚を交差させて夏輝の身体を仰向けにした。

 いつしかシーツは二人の流れる汗によってしっとりと湿っていた。

 

 両脚を大きく広げた夏輝は、呼吸過多の症状のように息を荒くしながら両手をケンジに伸ばした。

「ケンジ! イって! もっと、もっとイって!」

「夏輝!」

 ケンジは水泳で鍛えられた逞しい腰を豪快に上下させた。まるでバタフライのフォームのように。

 

 すでに何度もケンジが放出したものが、夏輝の中から溢れ出て繋がり合った二人の間に迸った。

「もっとたくさん頂戴! ケンジ、お願い!」

「夏輝、夏輝っ!」

「ケンジ! もう止まらない! 止まらないの!」

「僕ももう止められない! いい? 夏輝」

「あたしをあなたでいっぱいにして! お願い! もうあたし!」

 夏輝は狂ったように叫んだ。

 

「イくよ、夏輝、もう一度、イくよ!」

「ケンジ、出して、あたしの中にまたいっぱい出して!」

 ケンジと夏輝は激しく身体を揺すった。

 ベッドがぎしぎしと音を立てた。

「出すよ、夏輝、夏輝っ!」

「来て! ケンジっ! あたしの中にっ! あああああーっ!」

 

 びくびくっ!

 

 ケンジの動きが止まり、身体が大きく脈動を始めた。

 

「ああーっ!」夏輝が甲高い声で叫ぶ。

 

「うああああーっ! イってる! 僕もっ! 夏輝、夏輝っ!」

 

 汗だくになった二人は固く抱き合ったまま身体を大きく震わせながら、その夜で最高のクライマックスを迎えた。

 


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