第7話 赤い薔薇の秘密 page 1 / page 2 / page 3 / page 4

ドラマ終了後語り合う四人
ドラマ終了後語り合う四人

《greenroom talk~楽屋話》

 

 テーブルを挟んで修平と夏輝、健太郎と春菜が向かい合っている。

「警察官ってさ、」神父尊が言った。「休日で家にいる時は、拳銃を持ってたりするもんなの?」

 夏輝が顔を上げた。「拳銃は例外なく持ち出し禁止です。どうしてですか?」

「『修平の浮気現場を見て逆上した夏輝は、寝室の棚にある拳銃を手に取り、夫とその浮気相手に向かって引き金を引いた』なんてことになったりしないのかな、ってちょっと思ったんだよ」

 

「確かにあの場面の後は修羅場になるんでしょうね。普通だったら」健太郎がコーヒーを片手に言った。

「でも、」春菜が少しつまらなそうに言った。「ケンったら、夏輝と何度も浮気してる割には、ずっと真っ赤だったし、何か初々しくなかった?」

「いや、何度も浮気してるってのは設定であって、実際俺と夏輝が繋がるのはあれが初めてだったんだ。しかたないだろ」

「読者リクエストは、俺たち二組の夫婦交換だったんすか?」修平が赤い顔をして言った。

「修平くん、何で赤くなってるの?」神父尊が訊いた。

「だ、だって、俺、春菜とエッチするの、むちゃくちゃ緊張したんすから」

「そうなの?」

「そうっすよ。だって、相手は親友の妻っすよ? 俺、キスするのもものすごい勇気が必要だった」

「そうなんだー」春菜がにこにこしながら言った。「でも、天道くんのキスは、ちょっとワイルドでとっても素敵だったよ」

 

「今回は夫婦交換というより、」神父尊が言った。「寝取られをテーマにしてくれ、っていうリクエストだったんだ」

「つまり、」健太郎が言った。「パートナーが他の相手とセックスするのを目撃してしまう、っていうシチュエーションですか?」

「そう。目撃してショックを受けるだけでなく、その光景を見て興奮してしまう、という隠れた願望が露わになる話ってとこだね」

「ケンタは、イくのにえらく時間かかってたみてえだが」

 健太郎は真剣な顔を修平に向けた。「修平、お、俺が夏輝とセックスするの見て、ど、どう思った?」

「どうって?」

「飛びかかって引っぺがしてやる、なんて思わなかったのか?」

「それを言うんなら、俺が春菜とやってる時、おまえはそんな風に思わなかったのかよ」

「ルナには申し訳ないけど、俺、修平がルナを抱いて、一緒に盛り上がってるの見て、なんか、すっごく興奮しちまった」

「そうなの?」春菜が訊いた。

「う、うん。ごめん、ルナ」

「なんで謝るの? ケン。いいんじゃない? そういうのも」春菜はにこにこして言った。

「ルナはどうだったんだ? 修平に抱かれて」

「私、かねがね天道くんに抱かれたら、きっと素敵だろうな、って思ってた。欲深女って思われるかもしれないけど、ケンとは違うタイプのかっこよさと、何て言うかやんちゃさがある気がして」

「やんちゃ?」修平が自分の鼻を指さして言った。「なんか、みんな俺のこと、そう言うんだけど……」

 健太郎が横目で親友の顔を見ながら言った。「やんちゃだろ」

「実際どうだった? 春菜」夏輝が訊いた。

「うん。やんちゃだった」春菜は笑った。「私がケンのパートナーだからって、始めは意識してシャイな感じだったのに、身体が興奮してきたら、我慢できないみたいな顔で私を抱いたりキスしたりするんだもん。かわいい、って思ったよ」

「だよねー。ま、それが修平らしい素敵な所なんだけどね」夏輝が笑った。

 

「でも夏輝も今回ずいぶん緊張してたみたいだね」

「うん。そうなんだよ。修平に抱かれる時やこないだ龍くんと抱き合った時は、けっこう素の自分を出せて、思いっきり開放的に気持ち良くなれたけどさ、ケンちゃんに抱かれると、何だかすごく恥ずかしいっていうか、ドキドキするって言うか……」

「何で?」

「高校ん時、ちょっとだけケンちゃんを意識してたことがあってさ、この逞しくてセクシーな身体に抱かれたら、どんな感じなのかな、って思ってた」

「そ、そうなのか?」健太郎が赤くなって言った。

「うん。でも、修平とつき合い始めて、修平のことで頭がいっぱいになってからは、そんな気にならなかった」

「良かった……」健太郎がほっとため息をついた。

「何かさ、修平とはいずれカラダの関係になるかも、って思ってたけど、ケンちゃんとそういうことになるなんて、それ以来考えたこともなかったからね。だから実際ケンちゃんのハダカを目の前にしたら、あの時ケンちゃんを意識してた頃のことを思い出して、修平への申し訳なさも手伝って、なかなか積極的になれなかった、ってとこかな」

「ケンも夏輝と同じように思ってたの?」春菜が健太郎に目を向けた。

「うん。俺の場合、高校の時は実際夏輝のことが好きだったし、その時の気持ちも少し思い出したのは事実。でも、やっぱり修平に対する罪の意識が大きかったね。だからカラダは興奮してたのに、なかなかイけなかったんだ」

 

「知らなかった……」春菜が気まずそうに頬に手を当てた。「みんなけっこう気にしてたんだね、お互いのこと」

「春菜はそうじゃなかったの?」

「みんな、そういうことをとりあえず忘れて、芝居を楽しんでるのか、って思ってた……」

「心から楽しめなかったな。そういう意味ではなかなか悔しい」修平が言った。

「私、この企画がスタートした時点で、みんな割り切って楽しんじゃうんだ、って思ってた。私もケンに対する申し訳なさがなかったわけじゃないけど、結局夫婦交換でお互い様だし、って思って……。なんか私だけ淫乱みたいね」

「そんなことはないさ。単に俺たちが臆病者だった、ってだけで」健太郎が笑った。

 

「じゃあよ」修平がテーブルに身を乗り出した。「今度はお互い公認の上で、もう一回設定しねえか?」

「パートナー交換を?」夏輝が呆れたように眉を下げて言った。修平はうなずいた。

「ケンタもよ、今度は気兼ねなく夏輝と抱き合って気持ちよくなりゃいいじゃねえか」

 健太郎は赤くなって夏輝と隣の春菜を交互に見た。「い、いいのか? そんな……」

「素敵ね」春菜がにこにこしながら言った。「今度はどこか、ゆっくりできるところで交換プレイしましょうよ」

「修平ってば」夏輝が横目で修平を軽く睨みながら低い声で言った。「春菜のカラダが病みつきになったの? もしかして」

「そ、そんなんじゃねえやい!」修平は赤くなって口角泡を飛ばした。

「ふわふわしてて気持ちいいんでしょ? 春菜の抱き心地」

「た、たしかに柔らかくてふにふにしてて……」

 

 一同は大笑いした。

 

「じゃあ、僕の知ってるレジャーホテルを紹介してあげるよ」神父尊が言った。「みんなでたっぷり楽しめるよ」

「ほんとですか?」夏輝が言った。

「海の見えるちょっとしたリゾートホテルなんだよ。パートナー交換プレイ用の部屋もあるんだ」

 春菜が言った。「え? それってどんな……」

「ベッドルームの様子を隣の部屋から見ることができる」

「やだ! 楽しそう!」夏輝が言った。「修平と春菜が絡んでるの、また見られるんだ」

「おまえ……」修平は顔を赤くしたまま口からカップを離した。「俺が春菜とヤってるとこ、そんなに見たいのかよ」

「うん。あんただってあたしとケンちゃんが愛し合ってるところ、見たいでしょ?」

「見たい見たい!」春菜が身を乗り出した。「ケンと夏輝、とってもお似合いだもの」

「な、なんだよお似合いって!」健太郎がコーヒーを噴き出しそうになりながら慌てて言った。

「画になるってことよ。二人の裸、とってもきれいで抱き合ってるところもドラマのシーンみたいだったもの」

「まったく、」神父尊が呆れ顔で言った。「みんな調子に乗っちゃって」

 

――the End

                                                                              2016,02,13

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(未公開イラスト)



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